内海皮フ科のブログ

口内炎、口唇ヘルペス半夏瀉心湯

  口内炎や口唇ヘルペスは皮膚科で良く診ている疾患の一つです。疲れたりストレスが溜まった時によく発症します。

 西洋医学的には口内炎には口腔用のステロイド外用薬や胃薬、口唇ヘルペスには抗ウイルス薬の内服薬と外用薬を処方しています。

 さて東洋医学的には半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)が処方されることがあります。あきば伝統医学クリニック院長の秋葉哲生先生は文献、高齢者特有疾患の漢方ベストチョイス36の中で、半夏瀉心湯は、いつも胃がもたれたり、悪心があって吃逆(しゃっくり)したり、腹がぐるぐると鳴って下痢しやすい人に口内炎などがある場合に用いられる。舌炎、口内炎、口唇ヘルペスのいずれにも効果を示す可能性がある。また急性期は西洋医学の対症的な薬剤を用いて対処し、慢性期に反復するのを漢方薬によって軽減あるいは治癒に導くという方針でのぞめば良い結果がきたいできるであろうと記載されています。

 私は繰り返す口唇ヘルペスの患者さんに免疫力を高める補中益気湯を処方して、症状の発現が抑制された症例を経験したことがありますが、口内炎、口唇ヘルペス半夏瀉心湯を積極的に処方してみたいと思います。

2023.2.27記載

 

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季節を感じる漢方薬

 

私の住んでいる松江市では、1月の後半になって雪が続く毎日が続いています。毎日雪の除去に苦戦しています。10年ぶりの寒波ということですが、TVでは地球温暖化が逆に影響していると報道していました。真冬の寒さを体験しています。

季節の移り変わりを実感するこの頃でですが、アトピー性皮膚炎の治療において、定期的に通院している患者さんに、冬になってきたので、標治(出ている皮疹を治療する)に処方していた消風散を、温清飲(うんせいいん)に変える患者さんが多くいます。夏には炎症を抑える消風散が効果的で、冬には乾燥した皮膚に潤いを与える四物湯と熱をさます黄連解毒湯を合方した温清飲が有効です。

また、この冬は寒さが厳しく、例年に比べて凍瘡(しもやけ)の患者さんが多いようです。凍瘡にはビタミンEや血行を良くする軟膏とともに、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)や温経湯(うんけいとう)を処方しています。

季節によって色々な漢方薬を処方できるのは、西洋医学にはない、漢方医学の特徴の一つです。

2023.1.31記載

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皮膚病雑記帳

 

漢方薬の供給不足

 

コロナ禍で漢方薬の供給不足が続いていています。漢方薬の需要がコロナ感染の拡大で増加したこと、世界的な生薬不足が原因と思われます。

しかし西洋薬と異なり漢方薬は比較的融通が利く薬剤なので、ある薬剤が無くても他のもので代用することが可能なことがあります。

例えば風邪によく処方される葛根湯が無ければそれに近い、麻黄湯や桂枝湯で何とか対応することが可能です。もちろんそれぞれ対応する病態に違いがありますが、大きくは違っていないので、ある程度の効果は期待できます。体力の低下した人に処方する補剤についても同様です。3大補剤として補中益気湯十全大補湯、人参養栄湯があります。補中益気湯気虚十全大補湯は気血両虚、人参養栄湯は気血両虚に安神、止咳の剤が加わったものです。補中益気湯が無ければ十全大補湯、人参養栄湯で代用することが何とか可能です。
 西洋薬と違ってある程度の融通が利くのも漢方薬の良いところです。
               (一部、高山宏正著 腹証図解 漢方常用処方解説より引用)

 2022.12.31記載

 

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コレクチム軟膏と漢方薬

 

2年前からアトピー性皮膚炎に有効なJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤のコレクチム軟膏が処方できるようになり、有効例が多く、患者さんにとって福音となっています。 JAK(ヤヌスキナーゼ)はアトピー性皮膚炎に関わるILインターロイキン)やIFNインターフェロン)といった炎症性サイトカイン細胞内シグナル伝達に関与する分子で、コレクチム軟膏はそのJAKを阻害することにより、アトピー性皮膚炎の炎症を抑えます。
 私もかなりの患者さんに処方し、有効性を確認しています。免疫抑制剤として、これまで処方していたプロトピック軟膏より有効な患者さんが多いですが、中にはプロトピック軟膏の方が、効きが良い患者さんもいます。ただプロトピック軟膏もコレクチム軟膏もそれですっかりアトピー性皮膚が治癒してしまうのではなく、再燃した際にはまた塗布しなければなりません。
 漢方薬には炎症を抑える方剤と体質を改善する方剤があり、急性期は炎症を抑える方剤を処方しますが、慢性期には体質を改善する方剤を処方することにより、アトピー性皮膚炎が治癒またはほぼ治癒状態になることもあります。
 西洋医学的治療と東洋医学的治療をうまく組み合わせて、アトピー性皮膚炎の治療を行いたいと思います。

2022.11.29記載

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  • 色で選択するにきび(尋常性痤瘡)の漢方処方

 

 松田邦夫先生の著書、『症例による漢方治療の実際』に、師匠の大塚敬節先生は、にきびの発疹の色で漢方処方を選択していたと記載されていたので紹介します。

 赤いにきびには清上防風湯、青いにきびには桂枝茯苓丸、白いにきびには当帰芍薬散を処方されていました。いずれも薏苡仁6.0gを加え、便秘する者には必ず大黄適量を加えると記載されています。

 松田邦夫先生によると、
赤いにきび:顔面が潮紅し、にきびも赤く、隆起も赤みを帯びているもの。
青いにきび:鬱血性の体質のもの、婦人でのぼせやすく、口唇が紫色で、下腹部に抵抗圧痛

(瘀血)があり、月経異常などがあるもの。

  白いにきび:遠くから見ると大したことはないが、近くから見るとぶつぶつとしているものが適応となる。白いといっても色白という意味ではなく、皮膚の色が変わらないという程度の意味である。貧血性で、冷え性の婦人などが適応となる、と記載されています。

 松田邦夫先生は内科の先生ですが、皮膚を細かく観察されています。

 

2022.10.29記載

 

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  • 色で選択するにきび(尋常性痤瘡)の漢方処方

 

 松田邦夫先生の著書、『症例による漢方治療の実際』に、師匠の大塚敬節先生は、にきびの発疹の色で漢方処方を選択していたと記載されていたので紹介します。

 赤いにきびには清上防風湯、青いにきびには桂枝茯苓丸、白いにきびには当帰芍薬散を処方されていました。いずれも薏苡仁6.0gを加え、便秘する者には必ず大黄適量を加えると記載されています。

 松田邦夫先生によると、
赤いにきび:顔面が潮紅し、にきびも赤く、隆起も赤みを帯びているもの。
青いにきび:鬱血性の体質のもの、婦人でのぼせやすく、口唇が紫色で、下腹部に抵抗圧痛

(瘀血)があり、月経異常などがあるもの。

  白いにきび:遠くから見ると大したことはないが、近くから見るとぶつぶつとしているものが適応となる。白いといっても色白という意味ではなく、皮膚の色が変わらないという程度の意味である。貧血性で、冷え性の婦人などが適応となる、と記載されています。

 松田邦夫先生は内科の先生ですが、皮膚を細かく観察されています。

 

2022.10.29記載

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  • 皮膚疾患、漢方治療の裏ワザ

 

テキストや能書に載っていない漢方薬の処方が、臨床の場では用いられ、有効なことがあります。いくつかを紹介します。

柴苓湯。柴苓湯パート2で紹介しましたが、ステロイド様効果を期待できます。皮膚炎の急性期にはステロイドを処方することが多く、糖尿病でステロイドを処方できない患者さんに処方することがあります。またにきび跡を改善し、ケロイドを縮小する効果もあります。

六君子湯。胃腸の働きを良くする漢方薬ですが、打ち身などで紫斑ができた場合に投与すると、比較的早く紫斑が消失することが期待できます。

人参養栄湯。褥瘡(じょくそう)に奏効することがあります。高齢者施設でよく褥瘡の方を診ることがありますが、体力をつけることによって褥瘡が良くなっていきます。他に補中益気湯十全大補湯なども有効ですが、私は人参養栄湯をよく処方しています。

 他にもまだありますが、またの機会に紹介したいと思います。

 

2022年7月30日記載